インプラントブログ

インプラントでなぜチタンが使用されるのか

2021.10.26

現在のインプラント治療では、チタンやチタン合金という種類の金属が多く使用されています。なぜチタン製のインプラントが主流となっているのでしょうか。

インプラントで使われる金属「チタン」とは

チタンとは

チタンとは、元素記号「Ti」で表される金属です。チタンは主に「純チタン」と「チタン合金」に分けることができます。「純チタン」は微量の不純物しか含まれていませんが、「チタン合金」は用途に合わせて、合金元素を添加した金属です。添加した元素によって、強度が高まるなど、性質が変化する特徴があります。チタンは、強く軽い素材であり、インプラントでの使用だけでなく、実は心臓のペースメーカーや人工関節、骨と骨をつなぐプレートやボルトなど幅広く使用されているのです。その他にもアクセサリーや航空機、アウトドア用品など幅広く使われています。

チタン素材のメリット

チタン素材のメリットは、強くて軽いという特徴だけでなく、表面に酸化皮膜が存在しているということが挙げられます。酸化皮膜は酸化を防ぐため、錆びにくいというメリットがあります。また、インプラント治療に使用する場合では、歯並びが崩れにくくなるため、治療後の矯正リスクが低くなると言われています。

チタンの代表的な3つの特性

軽い

チタンは、とても軽い金属で、他の金属の比重と比較すると、鉄の3分の2程度、銅やニッケルの2分の1程度の軽さになっています。そのため、インプラント治療に使用すると、違和感が少なく、快適に使用することができるといわれています。

強い
チタンの強度は、鉄の2倍、アルミの3倍程です。そのため、強い衝撃で割れる、折れるといったリスクが軽減されます。そのためインプラント治療後、硬い食べ物を咬む際も、破損や変形のリスクも低くなります。

錆びにくい(耐食性)

チタンは、表面の酸化皮膜を形成させることができるため、酸化しにくいという特徴があります。そのため、酸に強く、溶けにくいそして錆びにくい金属です。口にする機会が多い、酢やクエン酸に対する耐食性も高いと言われています。

チタンがインプラントで採用される理由

軽く、強く、錆びにくいチタンですが、インプラントでチタンが採用されるのには、こうした優れた特性を持つということ以外にも、人体に対して親和性の高いという特性があるためです。

金属アレルギーを起こしにくい

金属アレルギーは、すべての金属で発症しやすいということではありません。特にニッケル、クロム、銀、パラジウムなどの金属がアレルギーを引き起こしやすいといわれています。その点チタンは、空気に触れると表面に酸化皮膜できるため金属イオンが溶け出すことはほとんどないといわれています。そのため、インプラント治療では金属アレルギーを引き起こしくい材質であるとされています。

骨結合で口内の骨と強固に結びつく

チタンは、骨と結合するという珍しい特徴ももっています。チタンの結晶構造は6万晶系とよばれる6角柱の形をしています。そして人の骨や歯を構成している結晶構造も6万晶系です。チタンと人の骨や歯を構成している分子の形が類似しているため、チタンと骨は強固に結びつくとされています。チタンと骨の骨結合は、骨を表すオス(OS)と結合を表す英語のインテグレーション(integration)が合わさり、オッセオインテグレーションといわれています。このオッセオインテグレーションにより、快適に食べ物を咬むことが可能になります。

偶然発見されたチタンと骨の結合

チタンが骨結合するという特徴は、1952年、『現代デンタルインプラントの父』と呼ばれている、スウェーデンのブローネマルク博士によって偶然発見されました。観察実験のために、ウサギのスネにチタン製の生体顕微鏡を取り付けていた際に、チタンと骨がくっついてしまい外せなくなってまったのです。
この偶然の現象によって、多くの研究が重ねられ、1965年からはチタンによるデンタルインプラントシステムの臨床研究が始まりました。こうして開発されたブローネマルクインプラントシステムが現在のインプラント技術の源流になっています。

チタンはインプラントにとって理想的な素材

金属アレルギーを起こしにくく、骨結合で口内の骨と結びつきやすい金属であるチタンは、現在ではインプラントの理想的な素材のひとつとして、世界中で採用されています。チタンの採用はインプラントの普及・発展に大きく貢献し、多くの臨床を経て現在も引き続き技術的な進化は続いています。

チタン製インプラントによる金属アレルギーを避けるには

以上のように、チタンは人体に対して金属アレルギーを起こしにくい特性を持ってるとはいえ、実際の反応は個人差があります。起こりうる金属アレルギーの影響を理解した上で、インプラント手術を行うか、慎重に判断することが大切です。

金属アレルギーの種類と症状

金属アレルギーの代表的な症状に、下記が挙げられます。

接触皮膚炎

ピアスやネックレスなどのアクセサリーに使用されている金属が、汗により溶けだしてイオン化することがあります。溶けだしてくると、イオン化された金属と皮膚のタンパク質がくっつくことで、変性したタンパク質になります。そして変性したタンパク質を体の免疫システムが“異物”とみなすことで、アレルギー反応が生じるのです。主なアレルギー反応の症状としては、金属が触れた部位やその周りに赤みやかゆみが生じます。

全身性金属皮膚炎

銀歯や、食事中の際にごく少量の金属が食事と一緒に体内に吸収されることにより発症すると言われています。症状としては、手足に膿がでる、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、手足に水ぶくれができる、汗疱状湿疹(かんぽうじょうしっしん)などがあります。

お口の中は、唾液の影響や噛むことによる物理的な刺激によって、金属が磨耗しやすい状況になっています。そのため、お口の中は金属がイオン化されやすい環境であり、金属アレルギーのリスクが高くなっています。

扁平苔癬(へんぺいたいせん) 金属を使用したインプラントの周りに、網目状の白色の扁平苔癬が発生する病気です。扁平苔癬は、頬の粘膜にできることが最も多く、その他にも舌、歯肉、口蓋、口唇にできることがあります。

投稿者:ワイズデンタルクリニック

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