2023.04.26
新型コロナウイルス感染拡大のため、昨今では不要不急の外出自粛が求められることが多くありました。 しかし、医療機関への来院を過度に控えることは、健康上のリスクを高める行為です。歯科への「受診控え」がもたらす悪影響について、知っていただければと思います。
開業医・開業歯科医師に実施したアンケート調査によると、「新型コロナウイルス感染拡大に伴い、受診遅れや健康悪化があったか」という設問に、歯科の約6割が「あった」と回答しています。 2020年9月~10月に別の協会も類似の調査を実施していますが、医科の重症例が7%だったのに対し、歯科は約68%が症状の悪化を報告しています。全国的に歯科の受診控えは、他の診療科に比べて顕著な傾向がうかがえます。
虫歯や歯周病をはじめとするお口の病気は進行性であり、放っておいて良くなることはあり得ません。受診控えによって、本来失わずに済んだ歯を失ってしまったり、全身の健康状態が悪化した例も報告されています。
受診控えによって報告された重症例は、歯周病の悪化が最多です。歯周病は慢性疾患ですが、「サイレントディジーズ(静かなる病気)」とも表現されるように、自覚症状がほとんどなく、痛みもないため、治療の重要性が患者様に十分に理解されていないケースが見受けられます。 しかし、歯周病は糖尿病などの全身疾患とも深い関係があります。 神奈川県保険医協会の同調査では、糖尿病と歯周病の合併患者がメンテナンスを中断した結果、HbA1c(1~2カ月間の血糖値の平均指標)が悪化したという報告も寄せられています。
受診控えによって虫歯が進行してしまい、神経を取る抜髄に至った例、抜歯に至ってしまった例も報告されています。本来なら、神経を残せた、抜歯せずに済んだにもかかわらず、受診が遅れたことで、最終的にこうした処置をとらざるを得なかったのでしょう。 また、虫歯は初期段階では、歯を削らずに治療できることもあります。そのため、痛みはなくても定期的な健診が歯を守るためには有効です。抜髄・抜歯などの重症化までいかなくても、受診控えによって、削られてしまった歯も多いことが予想されます。
新型コロナウイルス感染症は、特に高齢の方の重症化が心配されていますが、高齢者の方が気をつけなくてはならない病気は他にもあります。日本人の死因第5位の誤嚥性肺炎もその一つです。 誤嚥性肺炎は、お口の中の細菌が原因で発症します。そのため、適切な口腔ケアは、誤嚥性肺炎の予防のために非常に重要です。厚生労働省のWEBサイトでも過度な受診控えによって「高齢者では、お口のケアが十分にできないことで、 誤嚥性肺炎のリスクが高くなってしまうおそれがあります」と注意喚起されています。
投稿者:ワイズデンタルクリニック