2022.04.07
高血圧症は、単に血圧が高くなるという病気ではありません。
高血圧症になると、心臓や脳などにいろいろな病気を引き起こす可能性があります。インプラント治療は、骨の中に人工歯根を埋め込む外科手術を伴います。このとき、高血圧症をもっていると、処置そのものが難しくなったり、処置に取りかかったりしたとしても血圧の上昇など注意しておくべきことがいくつかあります。高血圧症患者がインプラント治療を受けるときの注意点などについてまとめました。
高血圧症といいますが、どのような病気なのでしょうか。血圧がどれくらい高くなれば高血圧症とされるのでしょうか。
高血圧症とは、血圧が正常範囲よりも高くなる病気です。血圧は収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)によって表されます。高血圧症とは、収縮期血圧/拡張期血圧=140/90[mmHg]以上の状態です。なお、180/110[mmHg]以上になると重症高血圧症とされます。
合併症とは、ある病気が引き起こした異なる病気のことです。 高血圧になると、圧力の高い血液の流れが血管に負担をかけます。その結果、以下の様な合併症を引き起こす可能性があります。
◆脳血管障害
脳に栄養や酸素を送っている血管の中で、動脈硬化によって血液の流れが悪くなってしまいます。すると、脳が必要とするだけの栄養や酸素を受け取ることが出来なくなるので、脳梗塞を引き起こします。
動脈硬化により、脳の血管の弾性が損なわれ、かつ血圧が上昇することで、脳動脈瘤や血管が破れて出血してしまうことがあります。
血圧の上昇や動脈硬化により、心臓から血液を送り出すために大きな力が必要になってきます。そのために心臓の筋肉である心筋が発達して太くなってきます。そのために心臓そのものが大きくなってしまいます。
高い血圧が続いたり、動脈が硬化したりすることで、心臓から血液を送り出す働きが低下します。その結果、身体全体の血液の流れが悪くなってしまう病気です。
動脈硬化が原因で、狭心症や心筋梗塞など、心筋に栄養や酸素を送っている血管が詰まったり、血液を必要としたりするだけ受け取れなくなる病気のことです。
動脈瘤とは、動脈に出来たこぶの様なもののことです。これが破裂すると、脳梗塞を引き起こしたりします。
眼底とよばれる眼の奥深いところに走っている細い動脈に出血や血管の異常が生じます。
腎臓内部にある糸球体とよばれるところには、細い血管がたくさん集まっています。血圧が上昇し、その細い血管が損傷すると、血液中にたまった老廃物をろ過出来なくなります。この状態を高血圧性腎不全といい、ひどくなると人工透析をしなければならなくなることもあります。
高血圧症になると、前述した合併症のリスクが高くなります。ストレスを受けると人間は血圧が上昇します。インプラント治療をはじめとする歯科治療も血圧を上昇させかねないストレスを人間に与えてしまいます。 すると、歯科治療中に脳血管障害や虚血性心疾患が起こる可能性が高くなります。血圧が十分コントロールできているかどうかは、歯科治療を行なう時にとても重要な要素です。
血圧が160/95[mmHg]以上であれば、要注意とされます。インプラント治療など観血的処置をするときには、血圧の動態をモニターしておくことが要求されます。 血圧が180/110[mmHg]以上は、危険な状態です。局所麻酔の注射によるストレスにも耐えられない可能性があり、外科的な処置は避けなければなりません。 血圧がさらに上がり、200/120[mmHg]以上に高値だと、非常に危険な状態と判断されます。この状態ですと、観血的かどうかを問わず、歯科治療そのものが出来ません。もし、治療中にこのような状態に至れば、処置を中断し降圧を図り、回復を待たなければなりません。すなわち、血圧のコントロール状態が不良なのであれば、治療可能な血圧になるまで歯科治療は延期することになります。
狭心症や心筋梗塞などの合併症を有する高血圧症の場合、インプラント治療など歯科治療のストレスから血圧が上昇する可能性があり、注意が必要です。
高血圧症の場合のインプラント治療には、どのような注意点があるのでしょうか。
治療によるストレスは、血圧を上昇させます。治療時の痛みを緩和するための局所麻酔薬の注射も、注射針を入れるときはやはり痛いもので、血圧を上昇させる要因のひとつになります。インプラント治療に際しては、血圧などをモニターし、急激な血圧上昇に注意しなければなりません。
インプラント治療に際して、抗菌薬や鎮痛薬を処方されることがあります。高血圧症との治療薬と組み合わせると、高血圧症の薬の効果が下がり腎臓に影響が出ることがあります。薬の飲み合わせに注意しなければなりません。
高血圧症の治療薬のひとつにカルシウム拮抗薬とよばれるものがあります。この薬の副作用のひとつに、歯肉増殖症が起こることが知られています。歯肉増殖症とは、すなわち歯ぐきの腫れです。歯ぐきが腫れると、見た目が悪くなるばかりでなく、歯磨きがしにくくなり、自宅でのプラークコントロールが困難になります。インプラント治療後は、定期的にメインテナンスをおこない、歯ぐきの状態を良好に保ち、インプラントを長持ちさせるようにします。 しかし大切なのは、歯科医院でのメインテナンスだけではありません。自宅で行なう日々の歯みがきもまた、メインテナンスに劣らず重要なのです。歯みがきをしにくくしてしまう歯肉増殖症は、日々のプラークコントロールを悪化させる因子のひとつにあげられます。
投稿者:ワイズデンタルクリニック